1)ビジネスモデル特許とは
ビジネスモデル特許とは、一般にはインターネット等のコンピュータネットワークを利用したビジネスモデルに対して与えられる特許のことを指します。1997年に米国で投資信託のビジネスモデルについて特許を認める判決(State Street Bank事件)が下りて以来、我が国でも急速に注目を集めることとなっています。
 ビジネスモデル特許が注目されることとなった理由は、まず流通業・金融業などの従来は特許と縁遠かった業界が直接の当事者となる可能性が高まり、特許の対象となる関係者の範囲が大きく拡大したことが挙げられます。また、従来の特許と違って、多額の研究開発費をかけられない中堅・中小企業でもビジネスを独占できる可能性が高まったことも大きな事柄です。こうした背景から、我が国でも2000年頃よりビジネスモデル特許の出願が急増しています。
2)ビジネスモデル特許の要件
特許の要件は、特許庁の審査で判断されますが、紛争が生じると最終的には裁判所の判断に委ねられます。ビジネスモデル特許については未だ判例の蓄積が殆どないので、現状において結論的なことはいえませんが、別項の特許要件で見ると、「発明であること」と「進歩性があること」の解釈が、主要な問題となっています。
 「発明」は「自然法則を利用した」ものでなければならないので、人為的な取決め、つまりビジネスモデルそのものは特許にならない、というのが現在の一般的な解釈です。特許になるためには、何らかの技術的要因が必要です。この点は誤解されやすいので、注意してください。
 「進歩性」については、周知のビジネスモデルをコンピュータ上で実現しただけのものであれば、容易に発明できたものとして「進歩性」が認められません。特許庁のホームページで具体例を挙げて説明していますが、実際の出願となると微妙な問題も多いので、弁理士等の専門家に相談すべきでしょう。
3)ビジネスモデル特許の現状と今後
前述の通り、ビジネスモデル特許の有効性については確定しない部分が大きいため、「とりあえず出願しておく」という企業が増加し、ビジネスモデル特許の出願件数は急増しています。書店に多くの本が並んだ時期に比べると、ブームはやや沈静化した感もありますが、特許は出願から審査を経て登録されるまでに2〜3年を要するため、これらの大量出願が権利化され、紛争が生じ得るのは、まさにこれからということになります。
 出願の判断については、コストとの関係もありますが、当該ビジネスモデルのユーザーの安心感を考えても出願する意義はあり、自社のビジネスモデルの中で特許の対象になる可能性のあるものについては、出願を検討するのが安全でしょう。
 また、今後問題になってくるのは、他社権利侵害のリスクをどのように回避するかです。特許は原則として出願から1年半でその内容が公開されるので、自社のビジネスに関連する分野について、サーチを継続することの重要性は、ますます高まるものと思われます。