ビジネスヒント 民事再生法 商法による会社整理 破産法 特別清算
会 社 更 生 法 と は
 この法律は、窮境にあるが再建の見込みのある株式会社について債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とするものである。すなわち、この適用は株式会社にだけしか適用されない。有限会社や合資会社及び医療法人などのその他法人や個人企業は申し立てきない。なお、適用を受けると管財人が指名され、今までの役員の殆どは退陣する。
 昭和24年、ドッジライン政策という戦後のインフレの終わりから、景気後退→不況→倒産続出の状態に立ち至り、法務府が当時進駐していた連合軍総司令部の知恵を借りて、米国の破産予防制度の会社更生法案要綱を3年がかりでまとめ、倒産会社を積極的に更生させていくという前向きの制度をつくりあげ、昭和27年8月1日に施行された。
 申し立てた株式会社の債務は棚上げされ、将来の債務に伴う金利支払が、一時的にせよ良くなるわけである。だが、債務の弁済停止で犠牲になるのはたいてい関連中小企業である。これが社会問題となってクローズアップされ、昭和42年3月27日、下請けの優先弁済と社内預金保護等を一部強化した。
 また、運用のスピードアップを図るため、平成15年4月1日改正更生法が施行された。
(1)
会社更生手続きの手順
1)
更生手続開始申立て(会社更生法30条)
2)
保全処分申請(会社更生法39条)
 1)とほとんど同時に保全処分を申請するのが普通
3)
裁判所の調査を経て、保全命令及び更生手続開始決定
 1)及び2)を受けて裁判所は債権者、株主、担保権者、会社役員、従業員等のうちから適宜呼んで意見を聞き、主として「更生の見込み」の有無について調査する。その結果を踏まえ調査の過程において通常数日以内にまず保全処分が出される。その後さらに調査が続行され、裁判所が更生の見込みがあると判断した場合、更生手続開始決定される。したがってもし再建の見込みも薄いのに会社が整理をひきのばすために、会社更生の申し立てをしたのであれば、債権者は積極的に裁判所に意見を申し立てることが必要である。
4)
更生手続開始決定と同時に裁判所から管財人が任命される。(会社更生法46,53〜55条)
 更生管財人は、会社財産の管理処分権、経営権を持つだけでなく、更生計画案を作成しその実行を担当する重要な職務であるから、会社側と債権者とで協議してその人選について積極的に裁判所に意見を上申することが必要。
5)
更生開始決定と同時に裁判所は、その旨官報に公告したり、登記所等に登記させるほか、更生債権や更生担保権の届出期間、調査期間、第一回関係人集会の期日等を定めて関係者へ通知する。(会社更生法46,54条)
6)
各種権利の届け出(会社更生法125,126,143条)
 債権者は指定された期間内(通常1カ月程度)に更生債権や更生担保権を裁判所に届け出なければ、原則として権利を失ってしまうので注意が必要である。届け出られたこれらの権利については、管財人が調査し裁判所が定めた期日にこれを認めるか否かを発表する。
7)
債権調査期日日と第1回関係人集会(通常同時に開催される。)(会社更生法135,187,188条)
 第一回関係人集会は概ね開始決定後2カ月以内に開かれ、管財人が経過報告、将来の方針等を発表し、債権者は管財人の選任、会社の業務・財産の管理等について意見を述べる。また債権調査期日には管財人が届け出られた各種債権を調べ、これを認めるか否かを発表する。管財人が認め、他からも異議がなければその債権は確定する。(管財人らが認めない場合は、1カ月以内に管財人ら異議者を相手に訴訟を起こす。)
8)
更生計画案と第2回関係人集会(会社更生法189〜195条)
 第1回関係人集会の後概ね10カ月位して(あらかじめ裁判所により定められた期間)、管財人らが作成し、裁判所に提出した更生計画案を審議する。
9)
第3回関係人集会(第2回と第3回が同期日に開催される場合が多い。)(会社更生法200〜207条)
 更生計画案を受諾するか否かの議決が行われる。可決されれば、裁判所の認可決定を経て更生計画案が確定し、以後その計画に基づき債務の弁済等が行われていく。
 更生計画案の議決は更生担保権者(特別の先取特権、質権、抵当権、商法上の留置権等)の組、優先権のある更生債権者の組、普通の更生債権者(担保のない債権等)の組、劣後的債権者(更生手続開始後の利息等)の組、株主の組、等に分かれて、各組ごとに表決するが、可決の条件は、更生担保権者の組では原則として議決権(普通は債権額)の5分の4以上、その他の更生債権者の組では、3分の2以上の同意で決まる。(会社更生法205条)
(2)
会社更生法の運用実態
1)
更生手続開始の申立ての約2分の1が更生計画認可に至っている。
 更生手続開始の申立てが行われても、全てが更生手続が開始されるものではなく、更に更生計画が認可されて更生会社となるものの数はさらに減少する。
 この減少したものは、破産、和議等に移行したり申立てが取り下げられたりしたものであり、更生計画認可までは、債権者は十分監視しておくことが必要である。
2)
更生手続開始の申立てから更生計画認可までは通常1〜2年である。
 認可案件の約半数は申立てから2年未満で認可となっているが、約5%は4年以上を費やしており、中には12年を費やしたものもある。
3)
更生計画認可から債権の弁済が最終的に終了するまでには、10年以上を覚悟する必要がある。
4)
一般更生債権額(担保のない債権額)の7〜8割は弁済されないことを覚悟する必要がある。
(3)
中小企業再建または少額債権に対する特例措置
1)
中小企業債権等の早期弁済制度(会社更生法12条の2)
 会社更生法112条の2の第1項では更生手続開始の申立てを行った会社を主要な取引先とし、更生債権の弁済を受けなければ事業の継続に著しい支障をきたす恐れがある中小企業については、裁判所は更生計画の認可決定前でも職権または管財人の申立てにより弁済を認可できることとされている。また同条第3項においては、管財人は更生債権者から第1項の弁済の申立てをすべきことを求められた場合には、直ちに裁判所に報告し、申立てをしないことにした場合にはその事情を裁判所に報告しなければならないこととされている。
 一方、同条第4項においては、少額債権を早期に弁済することにより更生手続を円滑に進行することができるときは、更生計画認可決定前でも、管財人の申立てにより、裁判所は弁済の認可ができることとされている。これは債権者の頭数を減らした方が、更生手続が円滑に進むことから設けられた規定であるが、運用状況を見ると、50万を上限としている例もある。
 本条文は、40年不況により山陽特殊製鋼等多数の関連中小企業に大きな影響を与えた大型倒産が発生したことに対処するために設けられたものであるが、未だに本条文の存在を知らない中小企業が多いため、十分に活用されていない面もあると言われている。
 早期弁済の申立てを行ったからと言って不利な取扱いを受けるものではないから、積極的に管財人に早期弁済を行うよう働きかけていくことが中小企業者にとっては必要であろう。
2)
少額債権の優先的取扱い(会社更生法229条但し書)
 会社更生法では、既に述べたように債権は更生担保権、優先権のある更生債権、一般更生債権、劣後的更生債権等に区分され、同じ性質の権利を有する者の間で更生計画の条件(弁済率等)は平等でなければならないとされている。
 しかしながら、229条の但し書で、更生債権者及び更生担保権者については、少額債権者について差を設けることができることとされている。この規定の実際の運用は少額債権の全額弁済の免除率の少額債権に対する配慮である。約2割のケースが適用されており少額債権の最高額は200万円未満が多いようだ。