ビジネスヒント 会社更生法 民事再生法 破産 特別清算
商 法 第 3 8 1 条 に 基 づ く 会 社 整 理 と は
商法の会社整理は、経済的危機に瀕した株式会社につき、裁判所の援助監督のもとで、利害関係人がその債権債務を整理して、企業の維持をはかる制度である。これを会社更生法と比較すると、管理人(ほぼ更生管財人に該る)は必置機関ではないから、従来の取締役が経営を続けることができ、また、手続の進め方、整理案の作成についても関係人の自治に委ねられているから、会社更生の対象となる企業より一廻り小さな会社につき、より安い費用で簡易かつ柔軟に再建を進めることができる。和議と比較すると、整理開始決定があると必要に応じて担保権実行としての競売の中止を命ずることができる等の点で、和議より強力な面もあるが、多数決制度がとられていないために債権者の1人でも反対があると成功しないという弱点がある。
(1)
商法上の会社整理手続
1)
整理開始の申立て(商法381条)
取締役(監査役、債権者、株主も一定条件を満たせばできる)は倒産状態に陥った経過、現状及び将来整理して会社の再建の見込みがあることを書いた申立書及び添付書類を裁判所に提出する。
2)
保全処分、検査命令、監督命令等(商法386条2項)
裁判所は申立て又は職権により、整理開始決定前でも、会社の業務の制限、財産の処分、業務及び財産に対する検査命令並びに監督命令等を発することができる(保全処分の申立てがあると裁判所は、会社役員、債権者、取引先等の意見を聞き、保全処分を発する)。会社の業務及び財産の検査命令により検査役が選任され、業績不良の原因、会社再建の見込、方法等を調査し、裁判所へ報告する(通常1か月)。
3)
整理開始決定(商法381条)
検査役の調査報告のほか、必要があるときは、関係者の意見を聞いて、裁判所は整理開始決定を発するか否かを決める。整理開始決定が発せられると、裁判所は競売手続の中止命令、整理案又は和議条件の立案命令及び実行命令、取締役・監査役の解任・会社の業務及び財産の管理命令のほか、2)で述べた処分命令等を発することができる。(商法384、386条)
4)
整理案の立案
整理案の作成については、通常6か月以内に整理案を作るよう命令があり、原則として取締役が行うが、管理人が選任されたときは管理人、整理委員が選任されたときは整理委員が立案する(商法391条)。
5)
整理案の実行命令
整理案が裁判所に提出され、次いで債権者の同意が得られると(債権者集会の規定はない)、裁判所は整理案の実行命令を発する(ただし、整理案に同意しなかった債権者は整理計画に拘束されない)。
6)
整理終結
整理が終了し、又は整理の必要がなくなったときは、整理終結決定がなされる。(商法399条)
(2)
商法上の会社整理の運用実態
開始決定に至る割合は約3割であり、多数の債権者の同意を得ることが困難であることが解る。
(3)
商法上の会社整理における債権の取扱い
商法は会社更生法及び和議法と異なり、条件の平等が法定化されていないが、裁判所の公的な監督のもとに実施される手続であるから、私的整理よりも強く債権者平等の原則が適用されると思えることが適当であろう。
しかしながら、和議法においても少額債権に対する配慮が認められているように平等はあくまでも実質的平等と解されるものであろう。
また、保全処分においては通常10万円から30万円以下の少額債権は弁済禁止命令から除かれている。